
西暦20XX年。国民参加型アイドル大会〈PROJECT TENKA〉の宮城代表として、青葉 燈は全国大会への切符を受け取った。彼女の役目は華のあるショーマン。けれど、求められるのは歌の上手さだけではない。土地の記憶を背負い、観客の支持を集め、47人の頂点に立つことだ。起動した相棒は、伊達政宗の戦術思想を女性人格として再構築した〈伊達政宗AI〉。光、間、視線誘導を秒単位で組み、観客の記憶を奪う演出戦。を勝利の基本に置くAIは、初対面から彼女の迷いを見抜いていた。
仙台の夜を背負う青葉 燈に、伊達政宗AIは炎、レーザー、可動ステージを重ねた必勝演出を渡した。「目を奪った者が、心も奪う」。燈はその言葉を信じてきたが、通し稽古の映像には、光に隠れて震える自分の指が映っていた。彼女は本番五分前、冒頭の装置をすべて止め、三日月形の照明だけを残してほしいと頼む。暗い舞台で最初の一音を外せば、逃げ場はない。それでも歌い切ると、遅れて青と金の光が会場を満たした。派手さを捨てたのではない。燈は、見せたい自分を決めてから飾ることを選んだ。
ステージが終わっても、答えが完全に出たわけではない。順位表示を待つ控室で、青葉 燈は伊達政宗AIとその日の選択を一つずつ振り返った。政宗AIが盛る華を、燈が自分の一音を見せるための舞台へ組み直す。 勝つための策と、守りたい気持ちは、どちらか一方を捨てるものではない。二人が次の戦いへ持ち越したのは、正解ではなく、自分たちで選び直せるという確信だった。宮城の会場を出ると、観客が口ずさむ旋律が夜の町へ続いている。その声を聞いた彼女は、天下統一とは誰かを従わせることではなく、知らなかった土地の物語を互いに歌えるようにすることかもしれない、と初めて思った。
宮城篇・了